LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)が発表した第3四半期決算は、2020年1〜9月の売上高が前年同期比21%減の303億ユーロ(約3兆7400億円)となった。しかし、グループは、「数ヶ月にわたる国外旅行の制限と店舗の臨時休業、生産拠点の臨時閉鎖」といった「非常に厳しい状況」に対し、「LVMHは上手く持ち堪えてきた」とも評している。
また、第3四半期単体(7-9月)ではオーガニックベースでの減収率は7%にとどまり、上期に比べると改善が見られたという。特にコニャックとファッション&レザーグッズ事業が回復した。全ての地域で上向きの傾向となったが、特にアメリカとアジアで顕著で、アジアでは増収にも転じている。
ファッション&レザーグッズ部門は増収転換
「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」をはじめ、「ディオール(Dior)」、「ジバンシィ(Givenchy)」、「セリーヌ(Celine)」など多数のラグジュアリーブランドを所有しているLVMH。中核事業となるファッション&レザーグッズの1〜9月の売上高は、特に店舗の臨時休業に大きく打撃を受け、オーガニックベースで前年同期比11%の139億ユーロ
約1兆7100億円)となった。しかし第3四半期には持ち直し、オーガニックグロース12%と増収に転じている。
特に「ルイ・ヴィトン」は「引き続き素晴らしい業績とクリエイティビティを見せた」とグループ。同メゾンは東京、上海のほか、リニューアルオープン予定のパリの百貨店「ラ・サマリテーヌ(La Samaritaine)」でもリアルなファションショーを開催した。さらに、フランス国内に新たな生産アトリエも開設している。
また、「クリスチャン・ディオール」も好調で、「ディオール ボビー(Dior Bobby)」やニットの「バージャケット(Bar Jacket)」といった新商品も高評価で迎えられたという。
その他、「フェンディ(Fendi)」、「ロエベ (Loewe)」、「セリーヌ(Celine)」などのブランドでも大きな回復が見られた。
パフューム&コスメティクス、ウォッチ&ジュエリーは回復も減収続く
パフューム&コスメティクスは、1〜9月にオーガニックベースで25%の減収となった。しかし、主要ブランドは持ち堪え、メイクアップ需要の低下や外国旅行者による消費の落ち込みをスキンケア需要が相殺したという。オンラインでの売上は引き続き増加傾向にあり、第3四半期には店舗での売上も大幅に回復した。
ウォッチ&ジュエリー事業も、1〜9月の売上高は30%減とやはり大きく落ち込んでいる。第3四半期には中国で改善が見られたものの、全体としては14%減にとどまった。今年から「バーゼルワールド (Baselworld)」撤退を決定したグループだが、8月26日〜29日に参加した見本市「ジュネーヴ・ウォッチ・デイズ 2020 (Geneva Watch Days 2020)」で発表した新作モデルは、小売店から良い評価を得たという。
トラベルリテールは引き続き苦境
化粧品小売「セフォラ(Sephora)」や免税店チェーン「DFS」といったトラベルリテールを束ねるセレクティブ・リテーイング部門は、1〜9月の31%減に引き続き、第3四半期単体でも29%減と停滞している。
「セフォラ」はオンラインでの売上が増加していることもあり、主要な市場でのマーケットシェアを伸ばしたとグループ側。「全世界で2カ月近くほぼ全ての店舗を休業したが、よく持ち堪えた」と評している。
一方、各国間の渡航は引き続き制限されていることから、「DFS」の業績は落ち込みを続けており、回復の兆しは現在まで見られていない。
ティファニー買収と訴訟について
今後の見通しについて、グループは「経済でも公衆衛生の面でも引き続き先行きが不透明であり、非常に不安定な状況においても、LVMHはコスト管理と投資の選別を強化することで、慎重な施策を行っていく」と述べている。
また、白紙となったティファニー(Tiffany)買収に関しても言及があった。LVMHを相手取り、故意に買収完了を引き延ばしたとして訴えを起こしていたティファニーを、グループ側は9月28日に「不誠実」として逆提訴していた。今回の発表によると、ティファニー買収に関しては、すでに各機関からの承認を9割得ている状態であり、10月末までには欧州委員会(EC)からも承認される見込みだという。裁判は2021年1月5日に行われる予定だ。