大人気「Jacquemus」、勢いの秘訣は?

業界人もインフルエンサーも毎シーズン夢中になっているフレンチブランド「ジャックムス(Jacquemus)」。南仏出身のシモン・ポルト・ジャックムス(Simon Porte Jacquemus)が2009年に若干19歳で立ち上げ、エッジィでありながら南仏の風を感じるセンシュアルなシルエットが人気を博しています。

大きなグループには属さず独立を保ちながら、2018年には売上高1150万ユーロ(約14億3400万円)を計上。また、2019年の売上高は2300万〜2500万ユーロ(約28億6800万〜31億1700万円)になる見込みで、現在50人以上の従業員を抱えています。

まさに2010年代を象徴するブランドとなった「ジャックムス」の成功について、ベルギーのコンサル会社Retviewsが独自の分析を発表しました。競争が激化するラグジュアリーファッションの世界で大手の競合相手と方を並べるようになったブランドの、興味深い要素を紹介したいと思います。

 

オンラインで最も人気のあるブランド

商業的な規模としてはまだまだ小規模ですが、インターネットやSNSの世界での「ジャックムス」人気は大手ラグジュアリーブランドにも勝る勢いです。公式インスタグラムアカウントに270万人以上のフォロワーを抱えるほか、グローバルファッション検索プラットフォーム「Lyst」の2020年第2四半期に「最も求められたブランド」ランキングでは、前四半期から61%もトラフィックを増やし、「ヴァレンティノ」を抑えて11位にランクインしました。

 

この投稿をInstagramで見る

 

JACQUEMUS(@jacquemus)がシェアした投稿

デジタルを通じた堅固なアイデンティティーの確立は、コロナ禍における新しいブランドのあり方としても一歩先を行くものとなっています。2020年春夏キャンペーンには、フェイスタイムを通じてベラ・ハディッド(Bella Hadid)がリモート出演。そして何と言っても見事だったのは7月に行った2021年春夏のランウェイショーで、パリ郊外の広大な小麦畑を舞台に発表されたコレクションはデジタルでライブ配信され話題を呼びました。

Retviewsは「ジャックムス」を「インフルエンサーとファッションブランドの間にある存在」だと評しています。

ラグジュアリーでありながら手を伸ばしやすい価格帯

もう一つの重要な要素が「価格帯」です。ブランドのDNAやクリエイティブなストーリーがはっきりしているだけでなく、フランスのクチュール・モード連盟会員としてパリ ファッションウィークにも公式参加している「ジャックムス」はラグジュアリーと分類されるに相応しいブランドと言えるでしょう。しかし、従来の大手ラグジュアリーブランドに比べると、その価格は比較的手の届きやすいものとなっています。

価格の比較
source: Retviews

Retviewsのデータでは、「バレンシアガ(Balenciaga)」、「プラダ(Prada)」、「サンローラン(Saint Laurent)」と「ジャックムス」の商品価格を比較。アパレル・バッグともに平均が1000ユーロ(約12万円)を超える他ブランドと比べると、「ジャックムス」は最も低価格でした。バッグの平均を見てみても、「ジャックムス」は625ユーロと、他ブランドの半額から3分の1にあたる値段となっています。

引用されているインタビューの中で、「僕の戦略ははっきりしている。ハイエンドなファッションブランドを、強いビジュアルインパクトで作り上げるけれど、価格はコンテンポラリーブランドと同じなんだ」とシモン・ポルト・ジャックムス本人が述べている通り、ラグジュアリーなイメージでありながらプレミアムブランドの価格帯を実現しているようです。

ナチュラルな素材使い

プロヴァンス出身のジャックムスは、ナチュラルな素材を多用しています。Retviewsのデータから、コレクションに使われている素材として、コットン、リネン、ビスコースといった自然由来の布の割合が高いことがわかりました。

また、コットンやビスコースを使ったからといって、それが必ずしもサステナブル(持続可能)な取り組みに繋がるわけではないことにRetviewsは言及していますが、エコという観点以外でも、コンフォートな着心地や質感から、リネン・コットンを中心としたナチュラル素材のトレンドがここ数シーズン継続しているのも事実です。

幅広いサイズ展開・定番の黒脱却

「インクルーシブ」という言葉が定着し始めた昨今、ファッションブランドにとってサイズ展開の多様性は無視できないものとなっています。「ジャックムス」はその点でも他ブランドに勝っているとRetviewsのデータでは示されているそう。

また、コレクションにおける色の構成も独特で、定番の黒を抑え、ベージュ 、ピンク、グリーンといった南仏らしい明るいカラーが多く展開されています。

アクセサリーより服?

多くのラグジュアリーブランドで売上の多くを占めるのが、アクセサリー類とシューズです。Retviewsのデータによれば、アパレルとアクセサリーの比率は3:1になる傾向が強いそうですが、「ジャックムス」の比率は1:1とほぼ同等。

 

この投稿をInstagramで見る

 

IM HAPPY 😅

JACQUEMUS(@jacquemus)がシェアした投稿 –

ただ、これはまだブランドの規模が小さいことも理由として挙げられており、今後どう変わっていくかは注目されるところです。現に、アイコニックなミニバッグ「チキート(Chiquito)」などイットバッグも多く送り出している「ジャックムス」。上記の比較的低めの価格帯も考慮すると、ブランドをけん引するカテゴリになる可能性もあるでしょう。

“セルフメイド”ブランドのポジティブなエネルギー

確固としたイメージと的確な戦略に裏付けられている「ジャックムス」は、自らのコミュニティーを作り、それを基盤に成長してきました。Retviewsはそれを”セルフメイド”の魅力と表現しています。

「若い世代にポジティブなメッセージを送りたいといつも思っているんだ。『ほら、僕は全部自分で作り上げた。可能なんだよ!』ってね」と語ったこともあるシモン・ポルト・ジャックムス。最近ではファッションだけでなく、カフェやレストランを開くなど、総合的なライフスタイルを提案しています。

(参照元:Jacquemus: How the Fashion House Out Shadows the Luxury Industry by Retviews

 

最新情報をチェックしよう!
>パリからニッチなファッション情報をお届け

パリからニッチなファッション情報をお届け

トレンド、ショッピング、ビジネスニュース、パリ生活。在仏10年近い現役ファッション関係者が、モード ラバーから業界人まで幅広くファッションに携わる方々に向けて独自の情報を発信しています。