どうなる?コロナ禍の2020年ブラックフライデー&サイバーマンデー

年末商戦は欧米諸国の企業にとって欠かすことのできない行事です。しかし、ヨーロッパを中心に各地でロックダウンが再導入され、第二波を迎えたコロナ禍は収束する気配を見せません。

11月末のブラックフライデー&サイバーマンデーのセールの重要性は年々高まっており、今では北米だけでなくヨーロッパにまで広がりを見せています。今年は消費者の動向に大きな変化が見られたこともあり、先の読めない年末となりそうです。

年末の購買意欲はそのまま、オンライン・値引きが鍵に

アジア太平洋、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、イギリス、カナダ、アメリカの消費者8000人に対して行った調査をまとめた楽天アドバタイジングのレポート「The Road to Recovery: 2020 Shopping Peaks Re-Imagined」によると、70%以上の消費者が、2020年のホリデーシーズンの予算を削減する意思はないと答えています。

オンラインの比重拡大

購入予定のチャネルとしては、「主にオンライン」と答えた消費者の割合は73%でした。「実店舗とオンライン半々」と答えた層も57%でしたが、今後の再ロックダウン状況によってはこの比率にも変化が生じそう。

Googleで「fashion online shopping」というワードの検索数が前年比で600%増加するといったことからも、2020年はオンラインショッピング飛躍の年と言えるでしょう。

ディスカウントへの関心も増加

そしてもう一つ、消費者にとってもブランドにとっても、今年は特に「値引き」がキーワードになることが予想されます。一方で、コロナ禍により世帯当たりの出費を抑えているという回答も40%以上に上り、購入の決めてがセール・値引きであることにも注目。

ファッションプラットフォーム「Stylight」も、今年の消費者は特に「価格に敏感」だと指摘。Googleでは、3〜5月の時点ですでに「best affordable」というワードが前年比で60%伸びるなど、コロナ禍で値引きへの関心が高まっていることがうかがえます。

デロイト(Deloitte)の調査でも、「新しい店を選ぶ基準」として、対象の消費者のうち62%が「最良価格」と答えたほか、「クーポン・ディスカウント」と答えた層は44%となっていました。

ペイパル傘下の価格比較・リワード情報ツール「Honey」は、最安値での買い物を好む消費者の割合が75%に上ったと発表しており、パンデミック前の46%に比べると非常に急速な伸びとなっています。

ファッション業界は過剰在庫と値引き抑制の板挟みに

そんな状況下で、コロナ禍に一際大きな打撃を受けたファッション業界にも、今年のブラックフライデー&サイバーマンデーとの付き合い方を考え直す必要が出てきています。

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によれば、コロナ禍により、ファッションとラグジュアリー産業全体の売上高は25〜40%ほど落ち込み、2020年末にはキャッシュ不足に陥る見込みとのこと。

値引きを抑制・廃止する方針も

値引きが消費者を引きつけるとはいえ、「シーズン」ありきのファッションの世界では消費者がセールシーズンを待つという習慣を身に着けること自体が致命傷になる可能性も。ブランドイメージという点でも決してプラスになるばかりではありません。

ニュージーランドのブランド「Maggie Marilyn」の創業者、マギー・ヒューイット(Maggie Hewitt)は値引きをやめて成功していますが、セールの習慣について、「シーズン中に買わず、3ヶ月後に値引きされてから戻ってくるよう消費者に教えてしまう。悪循環よ」と「VogueBusiness」に話しています。

「パタゴニア(Patagonia)」、「クリストファー  レイバーン(Christopher Raeburn)」などは、サステナビリティの観点からブラックフライデーをボイコット。

「シャネル(Chanel)」、「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)、「モンクレール(Moncler)」のように過去から一貫して値引きを行わないラグジュアリーメゾンも存在するほか、「プラダ(Prada)」や「グッチ(Gucci)」といった大手ブランドもシーズン終わりのセールを廃止しています。

デロイトのロッド・サイズ(Rod Sides)ヴァイスチェアマン兼USリテール・ディストリビューションセクターリーダーは、「需要と供給のバランスを取り、コスト以下で販売しなければならない過剰在庫を持たないことで、利益率も向上する。ブランドの利益にもなる」としていますが、とやはり中小ブランドは容易に値引きを手放せません。

販売チャネルをコントロールできるだけの力がなければ、直営店と小売店との間で同じ商品の値段で混乱が生じるなどといった弊害も出てきます。

コロナ禍で増加する在庫

BCGのフィリッポ・ビアンキ(Filippo Bianchi)氏によると、一般的なブランドは、在庫の60%をフルプライス、40〜50%をディスカウントで消化し、そして残りの10%をアウトレットなどのチャネルで処分しているとのこと。

しかし、コロナ禍でその比率は大きく変わり、値引きで販売すべき在庫の比率は60%にまで拡大していると言います。

「値引きに対するポリシーをどんなに厳しくしていても、ここまでの在庫を何とかする方法はない」と同氏。

バランスの取れた値引き戦略とは

キャッシュが不足する中、コレクション自体の規模を縮小し、シーズンレスなアイテムに注力するブランドも少なくないと「VogueBusiness」は分析しています。他には、インシーズンセールやアップサイクリングで過剰在庫の削減を目指す向きも。

そうした悩ましい状況に直面するブランドに対してBCGが提案するのは、「3シーズンマネージメント」という方法です。細かいデータに基づき、商品の需要を元にそれぞれ異なった店舗やシーズンに在庫を移動することで、「いつ、何を、どこで、どういった価格で販売するのか」のバランスが取れるというもの。

「『3シーズンマネージメント』は、環境にも財政にも優しく、長い目で見てブランドへのダメージも少ない」とビアンキ氏は説明しています。

一口に「値引き」といっても、ただ単に余った在庫を売り切るだけでなく、値引きする商品のセレクトや時期を厳選するといった「スローな」方策で成功するブランドも。敢えて人気商品を加えることで却って顧客ロイヤルティを高めるという効果も期待できるといいます。

過剰生産・超消費の見直しへ

コロナ禍によりこれまでの生活様式や消費のあり方を見直す動きが社会全体で加速していますが、ファッション業界も根本的な問題に向き合う時期にあるようです。

3兆ドルもの規模を誇るファッション・ラグジュアリー産業。しかし、BCGの調べでは、在庫消化のための値引き抑制に真剣に取り組んでいる企業は、わずか3〜5%程度だといいます。

ビアンキ氏は、本当の問題は値引きではなく、過剰生産と超消費という構造自体にあると指摘。

「例えば、アメリカでは毎週何かしらのセールが行われているし、期間が決まった値引きは衝動的な購買を刺激する。これはサステナビリティの問題で、ブラックフライデーのようなセールイベントは氷山の一角に過ぎない」。

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